持続可能性と市民性

番号は註です、。詳しくは、兵庫教育大等にある論文「市民教育としての環境芸術の教材」を参照のこと

市民的リテラシーとは
では,持続可能な社会を構築する「市民」に必要な市民的リテラシーとは,具体的にどのようなものであろうか。「学校における“市民的リテラシー教育”の導入の方向性」を研究している川中大輔は,「市民的リテラシーは、市民社会を担う『政治の技能と知識』と、様々な他者と共に社会を構成するための『共生の技能と作法』の二つが中心的位置を占めている」157)とする。さらに、「政治の技能と知識」の形成は、別の表現を用いれば、公共圏の担い手となるための「討議能力とそれを支える批判的知性の形成」と、行動的な市民となるための「市民的問題解決行動の形成」の二つを目指すものであるとも整理している158)。
そして、川中は、「共生の技能と作法」、「討議能力とそれを支える批判的知性の形成」、「市民的問題解決行動の形成」の3つの目標で示される技能の総体が市民リテラシーであるとし、体得すべき3つの目標を以下のように解説している。
○「共生の技能と作法」
  社会を構成する多様な他者の存在を積極的に承認しあい、共に社会を担っていこうと する心構えや、またそのためのコミュニケーション能力のことである159)。
○「討議能力とそれを支える批判的知性の形成」
  政治動向を批判的に理解・ 解釈し、公共圏における議論へ参加できる能力のこと。
 批判的という言葉には、二つの含意がある。一つは、公共圏が国家や政府の活動を監視 し、評価するという批判的機能を有しているという意味から、国家政府への批判的なま なざし。もう一つは、現状をあるがままに肯定するのではなく「現状の矛盾や問題点を 明らかにしたうえで、『より良い』未来に向けて知的・実践的模索を試みるものである」 という意味から、現状への批判的なまなざし160)。
○「市民的問題解決行動の形成」
  公共圏へ問題提起を行ったり、「公共圏の耕作人」としての役割を遂行したり、また 時に「問題」に対して解決への実際的な行動を起こしたり、参加する能力を意味してい る161) 。
 川中は,公共圏/市民社会の担い手たるアクティブで批判的な市民をいかに育成するかという問題提起において,その市民に必要なリテラシーを上記の3の要素とした。そして,「他者との共生」に必要な「あり方」として,相互に差異を承認し,討議の対象として付き合い続ける「相互承認」の関係性を重視している。
③持続可能な社会を構築する市民像とは
 以上の川中の市民リテラシーの定義やシティズンシップの定義おける議論を参考に,本論において目指す市民像,「他者とグローバルな関係を形成し,持続可能な社会を構築するために積極的に行動する市民」に必要なリテラシー(資質や能力)を以下のように整理したい。
第1,「ミッション(役割)の自覚」
 成員として社会を担っていこうとする心構え。自分及び家族,地域社会に対して愛着を持ち,よりよくしたいと考えること。自分が社会で何ができるのかを考え,どんな社会にしたいかビジョンを持ち,ミッション(役割)を自覚する。
第2,「コミュニケーション力」
 他者(自然・人を含めた周囲の環境)と関係を構築できるコミュニケーション力。
他者を認める能力(相互承認),多様な立場の人々に呼応する想像力,討議能力。
多様な主体と連携・協働して課題に取り組む力
第3,「市民の権利・義務・責任についての理解」
人間の自由,平等,自律や正義など民主主義の基本的価値を制度的かつ社会的   に保障する,市民としての権利・義務・責任,さらには,政治制度や機関,国民国   家との関係性等についての理解,
第4,「批判的分析力・思考力」
自分が属する社会の環境の動向に主体的に関心を持ち,その状況について批判的   に分析する力。現状の矛盾や問題点を明らかにし、『より良い』未来に向けて思考   ・模索する力。批判・思考に必要な分野の知識・スキル。批判的想像力162)。
第5,「問題解決力」
地域社会等への問題提起をおこなったり,その課題解決に積極的に行動する力。
課題解決に必要な情報やスキル,人材,資金を集め,実行のプランを企画し,実行する,マネジメント能力やファシリテーション能力。課題解決にむけた市民活動に主体的に参加すること。
 よって,本論で言う「市民」とは,宮島喬が第1に分類した「国籍を有する」,「市内に住む」等の単純な意味ではない。第2の分類「諸権利」に関連した「社会のメンバーとして認められ,それにふさわしい権利」を保持しながら,持続可能な社会を構築するために,第3の「行為の型」を具体化した「自らの役割を自覚し,批判的なまなざしで社会の課題を見いだし,その問題解決のために他者と連携して行動できる人」ということになる。 一言で言えば,「コミュニケーションを重視する,アクティブで批判的な市民」ということになる。
 日本の環境基本法においては,「国民は,基本理念にのっとり,環境の保全に自ら努める」163)と「国民」を市民社会の主体として表記してある。これは,シティズンシップの概念で示してきたように,グローバル化する社会の中でナショナリズムに偏った取り組みと誤謬される恐れがある。そこで,本論においては,「国民」を「市民」と置き換えて論考していく164)。
 さて,第3次環境基本計画では,その前文において「全ての構成員が参画することによってこれらの目指すものの実現が可能になる」165)と社会の構成員として「市民」の参画を期待している。次に「市民参画」は「持続可能な社会」にとってどんな意義があるのか考えてみたい。
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by kazukunfamily | 2011-02-20 12:58 | アートと環境

子どもと環境とアート教育の関わりを生かした図画工作科教育の実践的研究


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