)「環境に関する見方や考え方」と美術教育

(2)「環境に関する見方や考え方」と美術教育
「環境に関する見方や考え方」を育むために,新環境教育資料では,身近な環境や様々な自然,社会の事物・現象の中から自ら問題を見つける力と問題解決能力を身につける活動を重視している。
その中の「身近な環境や様々な自然,社会の事物・現象の中から自ら問題を見つける力」は,美術科の各学年の目標にある「対象を深く見つめ感じ取る力」と相互関連性が見出せる。例えば,中学2・3年上の教科書(日本文教出版2009年)には「新鮮な見方で」と,見方を変えて,見慣れた風景の思いがけないよさや美しさを発見し,独自の表現を試みる学習内容がある。感性や想像力を働かせながら,対象を深く見つめ感じ取ったこと,考えたことなどを基に,主題を生み出し表現する活動は,身近な環境にある良さや課題を見出す力を高めると思われる。
 また,2008年中央教育審議会答申(以後「答申」と表記)で「感じ取る力や思考する力を一層豊かに育てるために,-略-鑑賞の指導を重視する」とされている鑑賞活動も,課題を見つける力や環境に対する考え方を育むことに繋がると考えられる。
次に,美術教育の「造形的な創造活動の基礎的な能力」は,「課題解決力」として効果的な働きをすると思われる。この能力は,具体的に「発想や構想,創造的な技能,鑑賞などの能力」をさす。この中の「発想や構想の能力」は,課題を抱える環境の様相を基に,環境を改善する手だて考えたり,計画を立てたりすることに役立つと思われる。そして,「創造的な技能」は,殺風景な堤防の環境を改善するために,子どもが壁画を描く際に発揮され,よりよい環境づくり役立つと考える。さらに,「鑑賞の能力」は,作品等が環境に相応しいものになっているかどうか評価する際に必要になると思われる。
 このように,美術教育において「対象を深く見つめ感じ取る力」や「造形的な創造活動の基礎的な能力」を育むことは,持続可能な社会の構築につながる「環境に関する見方や考え方」を育むことに繋がると考えられる。
(3)「環境に働きかける実践力」と美術教育
2004年の「環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する基本的な方針」では,目指すべき環境教育として,環境との繋がりと自らが負荷をかけている現実の実感や理解を基に,それを解決する方法を考え,実行できる能力を育成することを求めている。すなわち,今後の環境教育は,自らのおかれている状況を分析,認識することに加えて,環境を自らの手で改善していくという,「環境に働きかける実践力」の育成を重視している。
 一方,美術教育の目標には「創造活動の喜び」がある。この「創造活動の喜び」は,自己の心情や考え,イメージを基に表現したいことをしっかりと意識して,それを自分なりの方法で作品として実体化した時や,その作品が心や生活に潤いをもたらしたり,役立ったり,他者に認められたりした時に実感される。ゆえに,運動会や文化祭等の学校行事において,美術教育で学んだ力を生かすことで,子どもは「創造活動の喜び」を実感すると思われる。この「創造活動の喜び」は,環境に働きかける実践力の育成する際に重視すべき視点と考える。なぜなら,創り出す喜びを得ることは,環境に働きかけようとする意欲や創造力を高め,それが環境の課題を解決する方法を考え実行する実践力を育むことになると思われるからである。
このように,美術教育で子ども達の「創造活動の喜び」を重視して造形活動を行うことは,持続可能な社会を創造するために,環境に働きかける実践力を育成することに繋がると考えられる。
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by kazukunfamily | 2011-03-06 13:25 | 博士をめざす方へ

子どもと環境とアート教育の関わりを生かした図画工作科教育の実践的研究


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