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博士受験用の研究申請書です。参考にね。

博士受験するときは、研究申請書をだします。これは、大きな影響をもちます。
なぜなら、この内容で面接がありますし、合否のおおきなポイントになります。
私の場合の申請書を提示しますので、教育美術の博士の方、参考にしてみてください。

研究計画書
「環境芸術の教材化に関する研究」
-環境教育の3つの学び(in,about,for)を活用してー


1 これまでの自己の研究との関連性
 博士課程の研究主題を『環境芸術の教材化に関する研究-環境教育の3つの学び(in,about,for)を活用して-』に設定する。この研究では、環境教育の3つの学び(in,about,for)を活用して、造形教育における環境芸術の意味や価値を明確にするとともに、環境芸術家の表現と子どもの表現との接点を整理して、環境芸術を造形教育として教材化する視点を捉え、教材の開発をおこなう。
この研究主題の設定は、修士論文『造形教育と環境教育の接点に関する一考察』の継続研究として行った下記2点の自己研究に基づくものである。
(1)環境芸術作家と子どもの造形活動との接点についての研究
 修士論文では、「自然環境」に関わる作家としてゴールズワージ、「人工環境」に関わる作家としてデュシャン、「人間環境」に関わる作家としてクリスト&ジャンクロードを取り上げた。特にクリスト&ジャン・クロードについては、『共同制作における子どもの造形プロジェクトについての一考察』において彼らが制作プロセスにおいて他者とのイメージの共有を重視していることを参考に、構想・準備段階におけるイメージの交流を大切にする共同制作の在り方を探った。また、ニューヨークでのザ・ゲーツプロジェクトに観客として参加して、どのようにして彼らが多くの人を巻き込み、作品に関わる者に他者理解と自己理解の場を提供しているかを研究し、『他者を巻き込む造形活動の一考察』にまとめた。さらに、『石膏とガーゼを使った外側型取り手法についての一考察』の研究では造形活動が他者を惹き付け、想いを伝えるの有効な手段であることを、シーガルの独特な手法を子供に体験させることで理解させることができた。ただ、安易に彼らの並べる、積む、包む、直接型取る等の表現手法をだけを真似させることは、環境芸術の持つ多様な価値を子どもに体験させずに終わってしまうと思われる。
 そこで、環境芸術作家の環境への関わり方や子どもの造形活動との接点を環境教育の3つの学びの視点(in,about,for)で捉え直し、環境芸術を子どもの造形活動に取り入れる意味と価値を明確にして、その価値を活かした教材化の視点を明らかにしたいと考えた。
(2)3つの学びの目標・内容・評価の観点についての再検討
 修論以後、『循環型造形活動の学習システムの研究』で環境に負荷をかけない造形活動システムを研究する一方、環境教育の3つの学びについて再検討を行ってきた。それは、現在の環境教育が、環境のために何をすべきかを考えるforの学びにおける他者との関わりを重視するようになってきたからである。そこで、『造形教育三系論と総合的な学習との接点についての研究』で林健造の造形教育三系論に着目し、「inの学び=イメージの系=共感力」「aboutの学び=技術の系=表現力」「forの学び=伝達の系=コミュニケーション力」と3つの学びを関連づけ、各学びで育みたい力を整理した。さらに『造形活動による幼小連携教育の研究』においては、幼稚園教育要領に示してある保育内容(人間関係・環境・表現)を参考に3つ学びを「inの学び=共感を重視」「aboutの学び=探求を重視」「forの学び=行動を重視」と捉え直し、各学びにおける評価の観点を明らかにした。しかしながら、「行動を重視」という領域設定が、他者との関わりが重視されているforの学びに相応しいのか、また、現場の先生方に理解されるのかどうか疑問が残った。
 そこで、博士論文において環境教育の3つの学びについて、その目標・内容・評価の観点等について国内外の環境芸術作家の制作プロセスにおける環境への関わり方や子どもの造形活動との接点をより深く調査することで再検討してみたい。そうすることで、環境芸術を造形教育において教材化する視点が捉えられ、教材開発ができると思われる。


2 先行研究との関連性における特色や独自性
「最上環境芸術祭」のプロデューサである白井信雄は、環境教育にとっての環境芸術の持つ意味について「癒しを与える側面」「気づきの側面」「創いの側面」の3つの側面から捉えている。また、環境芸術の政策上の意味を、環境政策、芸術文化政策、地域振興政策の3つの観点から捉えている。1)
 さらに、環境芸術を学校教育に取り入れた先行例としては、長野県千曲市立戸倉上山田中学校の美術科教諭が、子どもたちに美術を身近に感じてもらいたいと始めた「とがびアート・プロジェクト」がある。このプロジェクトは、生徒たちが組みたい美術家を選考、数ヶ月にわたり作家と作品を制作していき、中学校に展示して全域に公開するで学習活動である。今では地域・生徒・美術作家が一体となった地域の美術イベントに成長している。
 以上のように先行研究や事例は、「環境芸術の環境教育における価値」「環境芸術の社会的・文化的価値」「環境芸術を理解するイベントづくり」に関わる内容のものであり、環境芸術を造形教育において教材化する価値やその手だてを研究したものではない。よって、環境教育の3つの学びを活用して環境芸術を教材化する本研究は、多様な表現法と環境との関わり方を子ども達が学べる意義ある研究と考える。

3 3年間の研究計画
研究テーマを『環境芸術の教材化に関する研究-環境教育の3つの学び(in,about,fro)を活用してー』と掲げた。そこで、①造形教育における環境芸術の意味や価値を明らかにする。③環境芸術を環境教育や造形教育において活かした事例研究。③環境芸術を造形教育として教材化する視点を捉え、教材開発を行う。
一年目:環境教育の3つの学びを活用した授業事例やネイチャープログラム、国内外の環境芸術によるアート・プロジェクト等についての文献研究。また、学校と芸術作家が連携したアート・プロジェクトの進め方について調査する。これらを基に造形教育における環境芸術の意味や価値を明らかにする。

二年目:一年目の研究を踏まえ、二年目では国内において環境芸術家と地域や子ども達がパートナーとなり、行われるアートプロジェトや学校が芸術作家と共同でおこなった授業についてフ-ルドワ-クによる事例研究をおこなう。そこで、芸術家の環境との関わり方を分析し、(in,about,for)の造形活動の目標や内容等を改善する。

三年目:二年目の研究をまとめるとともに、環境芸術を造形教育として教材化する視点を捉え(in,about,for)の造形活動の教材開発を行う。また、地域を巻き込んだ芸術家と子どもが連携したアートプロジェクト実施の可能性も探る。    

4 教育実践との関連性
環境芸術を教材化した造形活動は、子ども達に表現活動を通して環境と人間との関わりの意味を身体で味わう場を提供し、環境をよりよく改善する取り組みへの意欲を高めると思われる。このことは、環境教育が個々の体験的で主体的な取り組みと、環境に内在する問題を見抜く力や新たな環境を創造する力を求めていることから、環境芸術は貴重な環境教育の手法になると考える。
 また、教科書等にある環境芸術を子どもに模倣させるのではなく、(in,about,for)の視点でとらえ、芸術作家の環境との関わり方を理解させることで、環境に働きかけてつくる意味を子ども達が見出し、自らのメッセージをこめた価値のある作品ができあがるとともに、その作品の放つメッセージに他者を引き込む体験をさせることができると思われる。
 さらに、この研究によって精選した環境教育の3つの学びの視点は、造形教育と他教科、他校種との連携授業づくりにも活用できると思われる。このことは、表現活動を通して他者との関わりを促進し、自己を見つめることができるという造形活動の魅力をアピールするよい機会になると考える。
by kazukunfamily | 2011-09-20 19:54 | 博士をめざす方へ

子どもとアートとict教育の関わりを生かした図画工作科教育の実践的研究


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