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身近な環境から学ぶ表現活動

1 環境教育の課題
 21世紀を心豊かな世紀とするために我が国では、国際化・個性化(福祉)・情報化などともに「環境にやさしい取り組み=エコロジー」が注目されている。
この「think grobally act locally=地球規模で考え、足下から行動する」という「地球市民」の立場を意識した活動は、そのベーシックな活動の一環として環境教育を重要視しており、第15期教育課程審議会答申においても「環境や自然を大切にする心を育み、環境保全やよりよい環境を創造するために主体的に行動する実践的な態度や資質や能力の育成」をあげている。
 ところが、1970年代から活発に公害学習などを行ってきた環境教育自体が「授業が日々の実践に結びつかない」という大きな壁に突き当たっている。それは、環境問題解決に重点を置くあまりに授業自体が、徳目的な教育になっていたことや、子供が未消化になるほどの多くの知識伝達に終始していたことで、子供が環境との体験的ふれあいの中で培ってきた情意面や能動的な力を生かし切れていなかったためと考えられる。また、必要なものは全てコンビニにあるという「あってあたりまえ」の生活の中で自然や文化・人間という身近な環境とのふれあいの機会が減少したため、子供達が周りと「関わること」への自信と力をなくしかけていることも、壁を大きくする原因になっていると思われる。

2 図画工作科と環境教育
平成19年の新しい環境教育指導資料の「小学校、発達に応じた環境教育ねらい」における低学年のところで,表現活動に関わる次の記述がある。
「遊びや生活に使う簡単な物を道具を用いて製作し,その楽しさを体験するようにする とともに,物や道具への接し方や扱い方,その有用性に気付くようにすることが大切 である。」
 これは,図画工作の指導要領の1・2年の内容の A 表現
(1) 材料をもとにして,楽しい造形活動をするようにする。
 ア 身近な自然物や人工の材料の形や色などに関心をもち,体全体の感覚を働かせて,   思い付いたことを楽しく表すこと。
 イ 土,木,紙など扱いやすい材料を使い,それらを並べる,つなぐ,積むなど体全   体を働かせて造形遊びをすること。
 とほぼ一致する。また,1.2年のB鑑賞にも「身近な材料に触れ,その感じについて話したり,友人の作品の表したかった気持ちを聞いたりするなどして楽しく見ること。」という内容があり,よって,図画工作における表現活動は,小学校における環境教育のねらいである①環境に対する豊かな感受性の育成②環境に関する見方や考え方の育成③環境に働きかける実践力の育成の基礎となる重要な位置づけがなされているといえる。
3 教材開発の視点
(1)気づきを生む表現活動
子どもの表現活動を通して。どのような環境教育を展開すればよいかといえば,小学校においては,環境問題に直接かかわる内容ではなく,その基礎なる「環境に対する豊かな感受性の育成」や「環境に関する見方や考え方の育成」に関わる表現活動の実践に重点を置くべきと考える。
 例えば,校庭にある石,木ぎれを使い,「すてきなランチセット」として,お箸やフォーク・お皿を作り,葉っぱや土で料理をつくるとする。すると子ども達は,校庭の植物や葉っぱの下にいる生き物の存在に気づくと思われる。このような身近な環境にある「いきもの」との関わりを紡げるような「気づき」生み出す教材を開発することが大切と考える。

(2)異化作用を楽しむ表現活動
環境教育は身近な場(校庭・畑・公園)との関わりの中で活動や学びを展開することが多い。そのような場に関わる表現活動しては,例えば,低木を新聞紙で覆ってしまったりして,平素は見慣れてしまって意識することもなくなっていた風景が,一時的に見慣れぬ光景となって人々の前に立ち現れさせる活動が考えれる。いわゆる「異化作用」である。これによって,あらためて人々は「見えていない」物を意識し始めることになる。すなわち,見慣れた風景が別のものに変わったり,消えたりすることで,普段気にもにもしなかった,異化されたものの多少の価値が再認識できるのである。子どもたちは変身が大好きである。よって,身近な場を新聞紙を使ったりや教室で作った作品を並べたり,つるしたり変身させる活動を取り入れてはどうだろう。
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4 指導のポイント
 表現活動と環境とがよりよい関係で結ばれるように、以下の様な視点で表現活動の学び場の設定を行う。
・子どもの表現活動が環境とのつながりを実感できるような場所・材料・用具の設定
・子どもの環境への関わりを高める教師の支援
 場にある素材の事前チェック 場の魅力が増すポイント(木の枝,階段)のチェック
・場の安全性の確保 (危険箇所への配慮 サポート教員)
・時間的にゆとりを持って活動を展開できるように活動を構成する。
・後かたづけの視点として、次のことに留意する。
自然のものはできるだけ自然消却する。
 再利用できるものは分別して保管する。
 再利用きないものは、自治体のごとの処理方法別(焼却、
 埋め立て、リサイクル等)に分別しておき消却する。
by kazukunfamily | 2012-01-31 20:39 | 博士をめざす方へ

子どもとアートとict教育の関わりを生かした図画工作科教育の実践的研究


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