美術教育の現状とクリエィティブ・パートナーシップ

現在研究中の内容にクリエィティブ・パートナーシップがあります。
社会とシンクロし進化するアート,それについていけてない現場。それをつなぐ一つのキーワードとしてクリエィティブ・パートナーシップがあると思うわけです。で今日からこのテーマの連載をはじめます。

1999年の学習指導要領において美術教育は小学校・中学校とも時数減の対象となった。2008年の改訂で危惧されていた「中学校美術の選択教科化」は,審議会への美術学会及び関係教師の提言等により阻止できたとはいえ,美術教育を取り巻く現状は非常に厳しい。 
中学校2・3学年では,総授業時数に対して美術科の占める割合は3%あまりであり,改訂で選択教科がなくなった分,実質は減少していると言える。また,小学校の図画工作科でも,授業実践の連携を図ってきた総合的な学習の時間の時数が減少することで,小学校においても子どもの造形活動の時間を十分に確保できなくなりつつある。
こうした状況は,授業を通した子どもの機会を奪うだけでなく,美術教育の全体の質や,個に応じた表現・鑑賞指導のあり方に影響を与えることが心配される。
2003年に行われた日本美術教育学会の「図画工作・美術科における鑑賞指導についての調査」によると,中学校美術科の専任教師は約59%(3%の免許外を含む)であり,免許外で美術科を担当する教員も,全体の3割(教員専任3%,兼任26.6%)に達しようとしている。
これは,美術科が将来,選択教科になることを見越したような教員配置であり,美術教師の資質向上させ,授業を充実させることを全く配慮していない。したがって,「子どもに表現や鑑賞を生活に活かす楽しみを味わわせることができるのか」という危惧を抱く。 
もともと詰め込みすぎとの指摘があった美術科の教育内容は,選択教科削減によってさらに過重となった。この現状の中,表現・鑑賞の活動を納得いくまで追究する「つくる喜び」を,授業の中で子どもに味わわせることができるのか疑問である。 
小学校においても。週当たりの総授業枠は同じなのに,改訂で時数が高学年で1時間,低学年2時間増えている。これは,ほぼ毎日6校時まで授業を設定する必要があり,教師の仕事量は増大し,子どもの実態を考慮した表現素材や用具を準備する時間が,さらに乏しくなると思われる。そのため,指導のマニュアル本の内容や業者の教材セットに依存する教師が増加する一方で,材料や制作場所確保に手間がいる,版や土粘土による表現や造形遊びの未実施に拍車がかかり,生活実感に乏しい授業が増えることが懸念される。
 また,教師の多忙化は研究の機会を奪う。そして,子どもが絵画制作で貧弱で粗雑な線描や彩色に終始しても,それを個性と誤謬したり,指導できない教師を生む怖れがある。これは,主題や機能性を追求し表現するための手がかりや方法を子どもと共に思考し,指導する姿勢を先輩教師から伝達する時間が確保できないことも一因と思われる。
一方,子ども達の図画工作,美術科への評価を概観すると,2005年の「義務教育に関する意識調査」では,絵や工作が「好き,まあ好き」と回答した割合が小学校高学年で77%,中学校で52%だった。図画工作科や美術科は子どもに比較的,人気のある教科といえる。
しかし,同調査の「中学校の生活や勉強で『絵をかいたりする力』をつける必要があるか」という質問には,中学3年生の32.6%が否定的だった。
この「好きだが,役に立つとは思えない」という子ども達の意識を改善にするには,普段の生活の中で美術の働きを実感し,将来,学んだことが社会で生かせると思えるような授業づくりが重要になる。
2008年中央教育審議会答申(以下「答申」と表記)では,「創造性をはぐくむ造形体験の充実を図りながら,形や色などによるコミュニケーションを通して,生活や社会と豊かにかかわる態度をはぐくみ,生活を美しく豊かにする造形や美術の働きを実感させるような指導を重視する」7)と「創造性の育成」に加え,「生活・社会に豊かに関わる態度の育成」や「造形や美術の働きを実感させること」が目標化され,社会との関わりを重視した美術教育が求められている。
一方,近年,地域社会と関わる芸術活動は,芸術と地域住民を橋渡しする役割を担ってきた。実際に日本各地で,芸術家が住民と連携して地域環境を生かした芸術作品を制作し,地域社会を活性化させるアート・プロジェクトが展開されている。
その様子から,学校においても,地域環境を生かした芸術活動,作家を教育活動と連携させることで,によって美術教育と地域社会との橋渡しをすることで,子ども達の地域社会への関心を高め,美術の働きを実感させる造形活動が展開でき,尚かつ,答申が示す「創造性の育成」,「生活・社会に豊かに関わる態度の育成」,「美術の働きを実感させること」という今後の美術教育が育成をめざす資質や能力を児童に提供できるのはないかと考えた。
そこで,着目したのが,クリエイティブ・パートナーシップ事業である。この事業は,1990年代後半から社会の中で行われている芸術活動を子どもが学校で体験できるようにする取り組みであり,現在,イギリスをはじめ,日本においても展開されている。

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犬島にて,みつけたアート
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by kazukunfamily | 2012-03-07 19:11 | アートと地域

子どもと環境とアート教育の関わりを生かした図画工作科教育の実践的研究


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