市民教育と美術教育の接点

平成19年1月に文部科学省中央教育審議会より出された「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」では、「知識基盤社会化やグローバル化の時代だからこそ、身近な地域社会の課題の解決にその一員として主体的に参画し、地域社会の発展に貢献しようとする意識や態度をはぐくむこともますます必要となっている」19)と学校と地域社会とが連携した市民教育の重要性を指摘している。そして、身近な環境に直接働きかける体験的な学びを通して、環境や自然と人間とのかかわり、環境問題と社会経済システムの在り方や生活様式とのかかわりなどについて理解を深め、持続可能な地域社会の環境づくりのために主体的に行動できる態度や資質・能力を育成することを求めている20)。  
身近な地域社会の環境に子どもが主体的に関わる学習活動としては、美術教育における造形あそびや廃材を活用した工作等がある。これらの美術教育における子どもの造形行為と環境との関係について、水島尚喜は「造形行為と環境の位相」の論説の中で下記のように述べている。
「美術行為は自然や対象の美を感じ、それらの内容を感性的な手段によって表現したり、鑑賞したりすることに関わる。対象を概念的に捕らえたり、記号化したりするだけでなく、作る、見るという過程を通して、直感的、情意的に把握することに関わっている。このような思考方法によって外界を美的に把握することは、環境への主体的な関わりを持つ強く意識することに連動する」21)。
すなわち、水島は、芸術行為において環境と直接関わる活動は、環境を美的に捉える思考過程が働いており、それが環境に関わる意識と連動していることを指摘する。確かに、市民教育が地域環境を学習対象の1つとする限り、環境に子どもが主体的に働きかけ、新たな魅力ある環境を創造するためには、まず、美術行為を通して環境に内在する課題を美的に把握することが大切になると思われる。また、平成19年の教育課程審議会、審議のまとめにおいても「感性や想像力、手や体全体の感覚などを働かせながら造形的な創造活動の基礎的な能力を高め、生活や社会と主体的にかかわる態度を育て・・」22)という一文があり、生活や社会と主体的に関わる態度は、感性や想像力、手や体全体の感覚を使う造形的な創造活動とともに高めることができるとしている。
よって、持続的な地域社会づくりに主体的に参画する子どもを育成する市民教育の実現のためには、身近な環境に対して感性や想像力、手や体全体の感覚を働かせて関わる美術教育の学習活動は有効と思われる。
一方、美術教育にとっても、市民教育として環境保全のために地域や芸術家と連携して芸術活動を行うことは、地域環境を生かす多様な表現方法を学ぶ機会になり、造形的な創造活動の基礎的な能力を高めることに繋がると考えられる。このように、市民教育と美術教育とは密接な関係にあると考えられる。

19)文部科学省中央教育審議会「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」、文部科学省、2008年、p .9 、文部科学省ホームページよりダウンロード、
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/001/07110606/001.pdf#search='審議のまとめ'。
20)同上。
21)水島尚喜、「美術教育の示す新しい方向性」、『21世紀を展望する美術教育の基礎的検討』、日本教育大学協会全国美術部門新教育課程検討特別委員会、1996年、p. 74 .
22)文部科学省中央教育審議会、前掲書、p . 916 .
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by kazukunfamily | 2012-04-27 02:16 | 博士をめざす方へ

子どもと環境とアート教育の関わりを生かした図画工作科教育の実践的研究


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