クリストの創造への想いと人間環境

1,クリストの巨大芸術と人間環境との接点。
クリストの巨大プロジェクトに1976年の「ランニングフェンス」という作品がある。これはサンフランシスコ北部に作られた高さ18フィート(約5.8メートル)長さ24.5マイル(約40 キロ)にも及ぶもので、その端は大西洋に沈みこんでゆく。
 このフェンスには、厚手のナイロン布が16万5千ヤード、2050本のスチールのポールとそれを固定する1万4千個のアンカーやケーブルが使用されている。なぜ、これほどの巨大な作品をクリストは作ろうとしたのか。一人では絶対できず、また、巨大故の様々な問題が起きているはずである。
 この作品だけでもクリストは、59人の牧場主と話し合い、18界の公聴会、裁判所での3回の公判、450ページに及ぶ「環境への影響に関する報告書」の作成、そして、陸海空の使用の許可のとりつけ等で42ヶ月の手間を要している。 また、制作においても、環境や人々の生活に影響を及ばさないように作品は、コンクリートなどで固定されず地面に埋め込まれてワイヤーで固定するという大変手間のかかる仕事がなされている。さらに、たった14日間の展示後、跡形もなく撤去され、素材の布は全て牧場主にプレゼントされているのである。
これだけ巨大で莫大な費用と手間のかかる作品を制作しても、残ったのは記録用の映像等だけなのである。クリストは「私の芸術は、プロジェク トのプロセス全体が作品である」と述べている。
 確かに、この作品のプロセスでも多くの問題が起き、作品について人々の中に裁判が起こるほど論議が高まり、環境調査の報告書まで作られた。 また、延べ数万人の人々がその制作を手伝い、作りながらクリストの制作意図等について多くの議論をかわしたはずである。
 クリストの作品は、彼自身がプロジェクトで地域に関わることで、そっとしておいたら何も起こらない蜂の巣をわざとつつき、多くの人をそのプロセスに巻き込んでいるようである。このあたりに彼の巨大な作品づくりの目的が隠されているように思える。また、彼の作品と人間社会という環境との接点も見いだせそうである。
 そこで、この項においては、彼の1980年から83年にかけて制作された「囲まれた島々」のプロジェクトを中心に、
・クリストと環境のインヴォルヴメント(巻き込む)
・クリストと環境とのコミットメント(関わり合う)
という2つの視点で、巨大プロジェクトを見つめ直し、クリストと人間環境との接点を明らかにしてゆきたい。

つづく
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ゲートの時であったクリスト
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by kazukunfamily | 2012-05-29 00:25 | 博士をめざす方へ

子どもと環境とアート教育の関わりを生かした図画工作科教育の実践的研究


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