歴史的地域プライドを育成する表現活動についての一考察 その2
2012年 08月 28日
2:獅子舞づくり実践地域における歴史的地域プライドの現状
本研究の実践校がある宍粟市一宮町三方谷地区(下三方、三方、繁盛地区)は鉱山で栄えていた。また、豊富な山林資源によって経済的に潤っていた。そのため人が多く集まり、獅子舞や舞踊が盛んに行われていた。しかしながら、鉱山が閉鎖、木材価格の下落により地域経済が弱体化し、転出者が増加したため、人口は減少の一途となった4)。
このような経済的な理由等を背景にした人口減少による各地区の獅子舞の現状について、平成19年4月に御形神社宮司に聞き取り調査をおこなった(図2)。
(繁盛地区)
・倉床・・・・20年ほど前より獅子舞中断。
・横山地区・・ちゃんちゃこ踊り(子ども舞踊)を実施。
・千町地区・・獅子舞継続中。(囃子・太鼓の演奏は中断)
(三方地区)
・西公文・・・獅子舞保存会あり、子ども獅子も開始。
・東公文・・・3年ほど前より獅子舞復活。
・河原田・・・獅子舞継続中。
・福野・・・・20年前より獅子舞、中断。
(下三方地区)
・福知・福中・だんじり屋台を導入し、祭りの活性化を図る。獅子舞は中断。
・生栖・西深・深谷・・獅子舞継続中。
各地域には横山神社等、地域の神社があり毎年、踊りを奉納しているが、その中心が御形神社である。この葦原志許男神を祭る神社は昭和42年に国の重要文化財に指定され、室町後期の様式や技法を伝える木組や彫刻があり鮮やかな彩色が施されている(図3)。
5月3日の御形神社春祭りにおいては、神輿3基と子ども神輿3基が総勢160名の渡御行列を組み、神社より踊野までを往復するお渡りが盛大に行われる。獅子舞は地域持ち回りで奉納されてきた(図4)。したがって、三方谷地区における歴史的地域プライドは、図5に示すように御形神社において室町時代から続く獅子舞がその一つである。
しかし、近年、過疎化で踊り手、囃し手がいなくなり獅子舞が途絶える地区が多くなり、保存会の活動が充実している西公文地区が獅子舞の奉納の中心になっている。
平成12年当時の勤務校宍粟市立三方小学校6学年の子ども達は、自分たちがよく遊ぶ各地域の集会所に使われない獅子頭等が押し入れの箱の中で埃をかぶって置いてあるのをたびたび目にしていた。すると、子ども達から「何とかその獅子を使った獅子舞を、学習発表会で披露できないか」という提案がでてきた。
図2
図3
図4
図5
4)宍粟市広報 http://www.city.shiso.lg.jp/ 2011年9月取得.
「宍粟市の人口は,平成12年時点で45,460人(国勢調査)で,昭和55年からの人口の 推移をみると,特に平成7年から平成12年には4.67%の減少と減少傾向が一層進ん でいる」