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図画工作科における指導と評価の一体化

ー子どもの自己理解と授業改善に役立つ評価を目指してー
新学習指導要領における図画工作科で大切にしなくてはならないのは、子どもたちが 単に見かけ上手な作品をつくることができるようになることだけではなく、ものづくり を通して思い・願いを形にして、主体的に造形表現の能力や技能等を高めるとともに、 自分自身のよさや可能性を感じられるようになるということだと考える。
さらに,21世紀をたくましく生き抜く「人間力」育成のためにも,図工科の基礎・ 基本の確実な定着と学んだことを進んで生活に生かそうとする創造的な力を育成するこ と,また,授業成果に対する説明責任を果たすためにも,指導と評価の一体化による授 業の質的改善が求められている。
そのためには評価を,これまでの作品を中心とした学習成果に着目したものに加え、学習過程そのものに目を向け、それを客観的に評価し指導に生かすことで子どもの学び を実りあるものにするという、表現過程を重視した評価と指導の一体化が必要であると 考える。しかしながら、子どもの活動の様相は複雑であり、これらの授業の中に立ち現れる様々な造形活動の意味を見いだし、価値付け、判断し評価することはなかなか難しいと思われる。
そこで、以下の4点において評価の工夫をおこない、評価と指導の一体化を図った。
 ①客観的に妥当性の高い評価規準を作成し、子どもの活動を評価する。
子どものよさやつまずきが読み取れ,的確な支援ができる授業づくりをめざすために,図画工作科の評価規準を教科書の教材をもとに作成し,それを生かした指導案をつくり実践事例を開発する。
 ②授業場面を「導入」「展開」「まとめ」の3場面に分け、有効な評価方法(診断的・形成的・総括的評価)と組み合わせることで、授業の展開と評価が平行しておこなわれるようにする。

・活動の導入・・診断的評価
 ラフスケッチ・自己評価カード・鑑賞課題カード▼ 教師活動記録表(名簿,座席表)
・活動の展開・・形成的評価
 材料・用具の扱い・会話・質問のメモ・作品▼ デジカメ画像・自己評価カード・相互評価付箋▼ 教師活動記録表(名簿,座席表)
活動のまとめ・・ 総括的評価▼
 作品・デジタルポートフォリオ・自己評価カード・鑑賞活動・デジカメ画像 ▼ 教師活動記録表(名簿,座席表)
③ポートフォリオ評価を活用し、子どもの自己評価、相互評価を取り入れる。
ポートフォリオ評価を活用して,自己評価で子どもが自らの可能性を自分自身で振り 返り、相互評価で互いによさを認め合い、自信を深め合う場面を重視したい。そのた  めに自己評価カード等の工夫をする。
④子どもの活動を評価しやすい教師用評価表とその活用の仕方を研究する
  一人一人の伸びやつまずきを確かめ、それに応じた指導を工夫するために,子どもの活動の様子を記録する活動記録表やその活用法を実践研究する。
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by kazukunfamily | 2012-03-28 14:29 | 教授の図工実践

比較に基づく鑑賞活動

1 比較鑑賞の目指す児童の姿
 ・自分の良さや美しさを捉える感性に基づいて自由な鑑賞、自分なりの鑑賞ができる。
 ・作者の生きた時代や生き方にもふれながら、さまざまなことを関連づけながら、自分  なりの批評ができる

2 作品の選定と観点
  比較鑑賞するので作品は、相違点が見つけやすくさせるために、似たモチーフを描い たものを選んだ。今回は鳥である。それぞれの作品については以下の通りである。
*「大家族」ルネ・マグリッド 1963年
 独特な空色や鳩や岩、そして、海が何かを象徴しているように見える作品である。し かし、本人は「私の絵に、何かの象徴を探してほしくない」と語っており、この作品に ついても、「頭に浮かんだ詩的なイメージを形にしただけ、描かれたものは、その形や 色以上の意味はない」と述べている。しかし、不思議な画面に発想がひろがる。
 (高橋郁男「大家族」『世界名画の旅』朝日新聞、1986 年p27)
*「飛翔」アンドリュー・ワイエス 1950年
ワイエスのわずかな地所であるペンシルヴァニアの丘を飛ぶヒメコンドルの風景は、 彼の数多くの作品に出てくる家と相まって、作品の雰囲気を盛り上げる。コンドルはこ の世に戻ってきた魂を象徴している。その魂が旋回しながら、そこに住む人々や人間関 係、日常生活を反映ししている家・丘を観察している。
(リチャード・メリマン「アンドリュー・ワイエス」同朋舎、1992年、p54)
独自の表現を模索した作家の鳥について、共通点や違い、周りの風景との関わりを考 えさせたり、自分ならどちらの鳥になりたいか考えることで、作品を深く味わうととも に、自分なりに作品のもつ良さや美しさをつかむ、鑑賞のものさしをもってほしいと考 える。
発問は以下のようにおこなう。
*まず、鳥を切り抜いたシートを渡す。
①それぞれに、飛んでいる想像して描いてみよう。
②どんな鳥だろう。
*鳥が描かれた絵を見せる。
③相違点は何だろう
④飛んでいる様子から受ける印象はどうだろう
⑤自分なら、どちらの鳥になりたいだろう。その理由は
*発展として
⑥鳥になって飛びたい風景(鳥になった自分も描こう)

3 授業の展開
①作品の観察 描かれたモチーフについて考察
         前半 鳥を切り抜いた絵・・シート
後半 鳥が描かれた絵・・・黒板
 ②観点にそって観察・比較する
③観点にそって意見交換
②鳥になって飛びたい風景を線描する
発問
「飛んでいる鳥を想像しよう」
大 家 族・・・鳩 白い鳩 ポケット鳥 不思議な国で生まれて面白い姿に変身できる鳥 水玉鳥 
飛 翔・・・・・・とんび 鷲 円の鳥 マーク鳥 苦しんでいた生活から解放されて自由に大空を飛んでいる
「同じところは?」
暗いところ  少しくらい  鳥が飛んでいるところ
あまり明るくない  鳥が翼を広げているところ
どっちも人がいない 空が見えるところ しっぽが同じ
くちばしがある 顔の形  鳥類
「違うところは」
大 家 族・・・海があって暗い 鳥が大きい 頭の形 明るい鳥 鳥の形 海がある 大地がない 1匹 体が空 
空が曇っている 旅立ちする時のような飛び方
飛 翔・・・・・・空が晴れていて、下に丘と家がある 羽 鳥の数が違う 砂漠がある 毛の生え方  鳥が暗い 大地がある 見た目は普通の鳥 羽が広がっている 鳥の羽が細かい 風に身を任せている
「飛んでいる様子から受ける印象」
大 家 族・・・暗い ・飛び立つ瞬間なので頑張ろうとしている様子 ・明るい、ぼーっとした感じ ・気持ちのオーラを出している ・体は明るいが自由でない ・危なそう ・今にも飛び出そうとしている ・用事がありそう ・なかなか飛べないでいる ・空は暗いがさわやかな感じ ・ゆっくり今飛びだそうとしている
飛 翔・・・・・・・明るい ・風にのって「僕は自由だ」という気 持ちが伝わる ・暗い、風に乗っている ・今から自由に空を舞って、自分の世 界を作っていく ・色は少し暗いが3匹一緒で楽しそう ・気持ちよさそう ・悠々と気持ちよさそうに3羽飛んでいる ・どこかに行くのかもしれない ・優雅にとんでいる ・どこまでも飛んでいけるぞ ・風に乗ってゆうゆう飛んでいる
「どちらの鳥になってみたいか?」
大 家 族・・・・色が綺麗でかわいい ・大きく羽ばたいている ・晴れていて、暖かそう ・広いところでとんでいて楽しそう ・鳥自身は明るいから、楽しい人生
飛 翔・・・・・・・・勇気があって仲間といるから ・いっぱい飛べる ・強そう ・広いところで飛んでいて楽しそう
・鳩より悩んでいない風で飛んでいる ・仲間がいて自由な感じ
4 さらなる鑑賞の充実を求めて
最初に、鳥の部分を白く塗りつぶしたシートを用意し、自分で描かれている鳥を予想させ、鳥への関心と、自分のイメージと作者の鳥とのギャップ、さらには、両者の鳥の描かれかたの違いに目を向けさせることをねらった。このことにより、特にジョージ・シーガルの鳥の描写の緻密さに子どもの関心が向いたと思われる。
 ただ、中・終盤の「どちらの鳥になりたい」という所で話し合いをもう充実させるのであれば、この鳥を予想する部分は削り、最初から両者の絵をじっくり見させてもよかった思われる。
 授業後、子どものシートを整理していて、絵から受ける印象で「大家族」に対して、「明るいが自由でない」などの意見があった、これに授業中に気づき、もっと広げてもよかったのではないかと反省する。
 また、まとめとして、同じ鳥を描いても、多様な表現方法が可能であることを、もう少しおさえておいてもよかったと考える。
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by kazukunfamily | 2012-03-25 23:20 | 教授の図工実践

「LOVE」を生むアートな授業づくり

1.「L」・・・・「LOVE
 2005年2月にクリスト&ジャンクロードのニューヨークのセントラルパークにおいてザ・ゲーツプロジェクトが彼らのホームページを見ていて実施されるのを知り、「よっ、しゃー」と飛行機に飛び乗ってしまった。そして出会った光景が図1のような数千のゲーツだった。そこで、その下を歩く人に「このアートをどう思うか」と聞いてみた。すると返ってきた答えが「LOVE」だった。確かに美しいけど、どうして「LOVE?」愛せるのだろうと思った。
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2.「O」・・・・「0,ho!」
 R、ギフォードは著書『環境心理学』において環境の価値判断に影響を及ぼすものとして「環境の好み」をあげ、その研究をおこなっているカプラン夫妻が見いだした「好みに関する4つの要素」を紹介している。
「一貫性=すぐに理解できること」、「分かりやすさ=将来理解できるという見込み」、「複雑性=すぐに関与できること」、「神秘性=将来関与しえる見込み」1)
 まず、ザ・ゲーツはその巨大さゆえに「複雑性」と「神秘性」が見て取れる。いうなれば「0,ho!なんだ、これ?」である。まず、ゲーツと森と街が作り出す複雑な風景は多くの情報を提供して観察者を引きつけたままにする。まるで神社の鳥居みたいで神秘的な光景も、もしその風景に踏み込んでいけば、もっと何か知ることができるだろうということを暗示している。かくいう私も、ゲーツのこの2つの要素に引きつけられ、ニューヨークまで出かけてしまった。
3.「V」・・・・「Value」
 学生のスタッフが「クリストは、アートで我々を解放する」と言っていたが、ゲーツに関わった人は、その形、色、場が持つ歴史・意味と関連づけて、多様な自分にとっての「Value」価値を見いだしていた。
4.「E」・・・「Easy」
 その多様な価値の発見を可能にしているのは、このゲーツが現代社会と関わることで成り立つという「一貫性」と、ゲーツ=門の持つ意味の「分かりやすさ」と思われる。確かに、ゲートの中に入ると「Easy」に自分なりの価値を発見できた。なぜなら、ゲートの下では多くの人とその価値について「Easy」に交流して、会話することできたからである。 
今回の学習指導要領改訂で、美術教育は時間数の現状維持はできたものの、その教科としての価値が問われ、「子どもが喜んでいるからOK」という体験主義の授業では、教科の存亡を問われてしまうと思われる。そのためにも、クリスト&ジャンクロードのような「LOVE」を生むアートの授業をする必要があると考えている。

■註
1)R、ギフォード、「環境心理学(上)-原理と実践-」、北大路書房、2005年、p109
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by kazukunfamily | 2012-03-24 19:02 | 教授の図工実践

空飛ぶ円盤で混色指導

混色指導はむずかしいですね。
そこで、おもしろい色の勉強法。
まず、紙皿をよういします。あとは輪ゴム。

これに写真のように色をぬり飛ばします。
さてどんな色になるかな。
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青と赤の線でどうなるか。楽しみながら色の混ざり具合をまなべます。
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by kazukunfamily | 2012-03-23 19:56 | 教授の図工実践

子どもの作品を見るとき、先生は・・・・

子どもの作品を見るとき、先生はどのように対応すればいいのか
・「何を作ったの?」と、好奇心を持って話しかける
・子どもの心情を受け止め、共感し、描いたものを理解し、認める心が大切
・子どもの作品の説明をゆっくり聞いて、たとえば「おとうさんと自転車に乗っているところなの」と、子どもが言うと、「そう、おとうさんと自転車に乗っているところなのね」と、オウム返しで相槌を打つ
・「走っている感じがよく出ているね」など具体的によいところをほめる
・もう少し工夫したらよいなという点は、良い点をほめた後で、「後ろの様子 をもう少し付け加えると、もっとよくなるよ」などと、ヒントを与えるどもにとって新しい方向付けにもなる。
・もっと工夫や努力が必要な時は、「だめだ」「○○しなさい」といった否定語 や命令語を使わないで、「どうしたらいいかな」と、子どもが考えるような話し方をしたり、「こうしたら、もっとよくなるよ」というような肯定語や推奨語、あるいは「あなたならどうする?」と、子どもから考えを引き出すような話し方をする。
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by kazukunfamily | 2012-03-21 21:02 | 教授の図工実践

奈良の学園前はすごい開発です。息子の引っ越し,

むすこが,奈良先端科学技術大学院に行くので,軽トラで荷物を運びました。
大学院の大きさにはびっくりしました。(さすがランキング日本一ですわ)
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それ以上にびっくりしたのが,大学周辺の開発具合,URの団地とか。巨大ショッピングモールとか,すごい開発です。兵庫の科学都市のイメージだったので,よけいに驚きました。

帰りは高速代をうかそうと国道でかえると,大渋滞にまきこまれ,すごくつかれました。
軽トラの長距離はパワーがいります。
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by kazukunfamily | 2012-03-20 21:53 | 地域情報

週末,帯広にいました。

この週末は,帯広にいました。
姫路から5時間でつくとは,あるいみ驚きでした。
で駅前で発見したのが,不思議な手,ほっかいどうらしく,アートへの懐がふかい社会ですね。この広い空間とアートがまっちしています。
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郊外に出ると,道がまっすぐ,これもびっくり,道の先がみえない。
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その道の脇も,広ーーーーい。真っ白。
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この道をしばらくあるいてみました。
あるいみ人生観がかわりますね。
新千歳では,ピカチュウ飛行機をみかけました。なつかしー。
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そしてオープンしたての展望デッキで,カツ丼をたべました。
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by kazukunfamily | 2012-03-18 16:56 | アートと地域

造形教育三系論に注目!

造形教育三系論に着目した理由
①論の明解さ                    
持続可能な社会の構築をめざす美術教育では,地域社会をはじめ多様な連携が必要となり,そこで行われる活動は,材料収集や展示場所の確保,片付け等に手間がかかり,教員には多忙感だけを残してしまう怖れがある。また,ねらいがしっかり提示されていないと子ども達にとっても,何のために活動しているのか,周囲から正当に評価してもらえるのだろうかという不安が芽生える。ただでさえ,市民教育や環境芸術は日本の教育現場に,その目標や学習内容が十分,浸透しているとは言えず,教師と子ども,双方にとって授業をイメージしにくいと状況がある。
そこで,「造形教育センター」の委員長であった林健造が,昭和60年代から考案し,図画工作科教科書のカリキュラムを構成する基礎理論ともなった「造形教育三系論」に着目した。論自体は30年以上も前のものであり,美術教育を取り巻く状況も当時とは異なっているが,「想像の系,技術の系,伝達の系」の三系で構成された論の明快さは,今日でも十分通用する。造形教育三系論の視点を差し挟むことによって,環境教育における学習活動を構造的に捉えやすくなると考えた
②他者とのコミュニケーションの重視
市民教育,美術教育の双方においても,社会や他者とのコミュニケーションは非常に重視されている。しかし,子どもと市民や芸術家等との連携活動では,講師が社会のルールや目新しい表現法等を子どもに一方的に伝達する関係になりやすい。それゆえ,図9のように,学校における子どもの学び・育ちと社会における市民の学び・活動が,連携の活動を通して関わり合い,共通の体験や学びを生み,それが徐々に共有化されていくことが重要になると考えられる。            
図 学校・社会の連携の形
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そこで,子どもの学び・育ちと市民の学び・活動を結びつけ,尚かつ,子どもの伸びとつまずきを教師や市民・芸術家等が同じ視点で把握できる学習内容が必要となる。
林はその著書『造形教育の探求“三系論を核にして”』(文教出版,1989年)において「子どもの造形活動とは,終局の目的は1つのコミュニケーションであり,まさに共通のものを生み出す働きである。いうなれば,自分のイメージのコピーを相手の頭の中に作り出す行為なのである」と,造形活動を通したコミュニケーションの重要性を指摘している。このように,他者(人,社会,自然等)とのコミュニケーションを重視しているのは,林の理論の特徴であり,学習活動を通してコミュニケーション力の育成を図っている環境教育等の他教科・他領域にとって,注目できる理論と言える。
(2)造形教育三系論について
「造形活動とは,記号を享受する力と記号を創造する力と記号を使用(伝達と解読)する力を育てていく創造的な営みである」29)と林が述べているように,三系論の論理的背景には記号論がある。この記号論を基に,子どもの表現の過程(教師側からは指導過程)を構成する学習活動を「系」とし,「想像の系」,「 技 術の系」,「伝達の系」でとらえている(図2)。
三系の内容は以下のとおりである。
①想像の系 
蓄積された記憶(原体験または先行経験)を素材としてこれらを単独に,あるいはそのいくつかを組み合わせることによって新しいイメージを作りだす過程。林はこの系を「記号を豊かに受け止める力」,すなわち感受性を育む表現過程としている。              
②技術の系                   
図2表現過程における三系論 出典 林建造『造形教育の探求』
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イメージは伝達の内容となり,それを何か     
の方法で,他人にも知覚できるように表現しなければならない。これが表現でありイメージを表現する過程である。例えば,クレヨンや絵の具の使用という技能面と,絵の画面構成上の約束事(様式)を学ばなければ,表現にはならない。この場合,相手(受け手)にもわかるように,一定の「コード=決まりごと」によって造形活動が行われねばならない。造形表現におけるコードに基づき「記号を作り出す力」,すなわち,表現技法を学ぶ過程が技術の系である。
③伝達の系
子どもが作り出した記号(もの)を受け手に伝達する系。その結果,受け手が喜んで受け止め,賞賛を返すと発信側は伝わった喜びとともに,「コード」の正当性を確かめることができ,表現への自信が生まれる。伝達には自己伝達(内容を自らに問い,認識を確かめる伝達)と他伝達(外へ向けての伝達)の2種類がある。「記号を使って伝達する力」を育む活動過程である。
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by kazukunfamily | 2012-03-15 21:08 | 博士をめざす方へ

日本におけるクリエイティブ・パートナーシップ事業

日本でも文化庁が,子ども達の芸術への関心を高め,豊かな心を育むと共に,学校の文化活動の活性化を図るため,芸術家や伝統芸能の保持者等を出身地域の学校に派遣する「学校への芸術家等派遣事業」を行っている。
これらの事業が行われる背景には,文化芸術の振興を図る目的で,2001年に公布された「文化芸術振興基本法」がある。この法律は,その24条において「国は,学校教育における文化芸術活動の充実を図るため,文化芸術に関する体験学習等文化芸術に関する教育の充実,芸術家等及び文化芸術活動を行う団体による学校における文化芸術活動に対する協力への支援その他の必要な施策を講ずるものとする」と,学校と文化芸術団体及び芸術家が共同でおこなう文化芸術活動を支援する施策を国に求めている。
そして,2002年から「文化芸術の振興に関する基本的方針」の見直しが行われ,2007年に「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」が閣議決定された。
その中で,文化芸術振興のために取り組む重点事項として「子どもの文化芸術活動の充実」が挙げられ,学校における文化芸術に関する教育への支援を行政に求めた。これを受け,文部科学省及び文化庁は,「学校への芸術家等派遣事業」を実施することとなった。
 しかしながら,イギリスと比較すると,その取り組みは十分とは言えない。例えば,その実施総数の少なさである。2008年度の事業実施校数は,都道府県あたり約27校で,小学校から高校を対象としているため,その割合は0.08%となる。
その原因としては,以下の理由が考えられる。
①事業は,地方公共団体が国の補助を受けて実施されるため,財政事情により実施校数が限定される。
②芸術家の登録名簿が不整備で,派遣講師の依頼が学校の負担になっている。
③事業の教育的な効果について,評価する指標や手だてが十分に示されていない。
④事業が,教師個人の力等に頼る散発的なものが多く,他校の参考になるような年間計画や実践例が十分でない。
⑤複数の省庁や出先機関が協調・協働して事業を支援していない。
日本での,こうした芸術家と学校の連携が深まらない現状を,民間の視点からサポートしているのが,各地のアートNPOである。その動きは全国に拡がっている.

その先駆的な存在がNPO法人「芸術家と子どもたち」である。そのプログラム「ASIAS(Artist's Studio In A School)」は,芸術家が学校へ出かけ,先生と協働でワークショップ型の授業を実施するものである。2000年に7校(350名)の参加から始まり,2008年では56校(2500名)の参加まで,その活動規模を拡大している。
「ASIAS」の仕組みは,学校の依頼(区,県・市教育委員会経由)によりNPOがコ-ディネーターになって,授業内容に適した芸術家を選定し,芸術家と先生による授業づくりのサポートを行う形式がとられている。
こうしたNPOの行う事業の活動費(講師料,材料費,事務局運営費)の一部は,企業メセナや民間財団が助成している。
NPO法人「芸術家と子どもたち」の活動報告書によると,ASIASでは,作品をつくる(結果を出す)ことよりも,むしろそのプロセスや,そこでのコミュニケーションが重視されている。
例えば,2006年に,このNPO法人が仲立ちとなり,東京都北区の西ヶ原小学校2年生(37人)が,建築家集団MOUNT FUJI ARCTHITECT STUDIO(代表,原田麻魚)と,段ボールを使った大型の構造物(巨大なヘビ)を制作している。この活動を教師が事後感想で「段ボールのイメージが覆るような劇的な変化だった」と述べているように,子どもと教師にとって,芸術家との交流は「ひとつ世界が拡がる機会」となった.

この活動報告が掲載されている『ASIAS活動記録集:2004~2006』によると,子どもが芸術家と出会い,協働することで以下の効果が期待できるという。   
①子どもたちの成長に関すること 
・潜在的に持っている力(創造力,コミュニケーション力,等)を存分に発揮できる。
・自分と他者との違いに気づき,多様な価値観を認め合うことができる。
②学校教育や学校の先生に関すること         
・芸術家との共同作業によって,刺激を受け,新たな 視点で授業と子どもを見つめ直し,創造的な教育に ついて考える機会になる。
 ③アーティストに関すること
  ・芸術家と社会との関わりを促進する。
・子どもとの関わりが,彼らの創造活動の刺激となる。
・教育において,芸術家が果たす役割について考える 機会となる。
以上の,イギリスや日本のクリエイティブ・パートナーシップ事業の報告書が示しているように,社会で活躍している芸術家や芸術団体を学校に派遣する取り組みは,子どもの創造性を刺激し,高めることができる。また,教師や芸術家にとっても創造的な実践・作品を生むきっかけになっている。
社会や環境と関わり,多種多様な方法で表現される環境芸術を教材にすることは,子どもや教師に多くのジャンルの芸術家・芸術団体との交流を提供する。そして,その交流の中で芸術家等と共に活動することは,子どもの創造性や他者と関わる力をさらに高めることになると思われる。
ただ,イギリスと比べ,日本のクリエイティブ・パートナーシップによる授業づくりの現実は,美術教師の個人的努力に頼るところが大きく,行政やNPOのよる支援体制も十分とは言えない。
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by kazukunfamily | 2012-03-14 00:56 | 博士をめざす方へ

クリスト&ジャンクロードと現実世界の関わり

クリストは現在,コロラド川のプロジェクトを進行中,なかなか大変そうですが,
今回こそ,手伝えないかな・・・と思うわけです。
前プロジェクトのザ,ゲートのレポートです。

1 クリスト&ジャンクロードと現実世界との関わり
 クリスト&ジャンクロード(以下クリストと表記)は、1960年代に地球そのものをキャンパスにしてしまい、地面に巨大な穴を掘ったり、飛行機ででもみないと全貌がつかめないような巨大な地表絵画を制作したランドアート、アースワークのサイト(何かある場所)の影響をすごく受けている。というのは、アースワーカーが、その場所のもつ磁場・エネルギー・エントロピー(密度)というものに、人為的な痕跡を加えることで、その磁場を噴出させたり、断層をみせるのに対して、プロストも場所の選定、場所の持っている意味性・エネルギーといものにすごく敏感であるからである。ただクリストは、自然の持っているエネルギーとは別に社会の持っているシステムの中で、アートがどのような切り口を見せられるかというところにプロジェクトの目的をもっていっていると思われる。
 作品「ザ・ゲーツプロジェク」の会場の人々の様子を見ていると、作品、周囲の環境、スタッフ、観客という「他者」との見る・触る・話す等のコミュニケーションによって個々がプロジェクトに多様な意味づけし、それを活発にパフォーマンスや会話・制作とうで他者に伝達しようしていた。この意味づけというのは、既に伝達可能になっている(すでに意味が言葉や形になっている)ものを伝達するような行為ではなく、新しい意味を作り出す行為と考えられた。クリスト・ジャンクロードも、9・11のテロ以降の混沌としたニューヨークにサフラン色のリボンのような何千というゲートを通路に立てることで公園を分割してしまう行為によって、多様にとれる意味を生成していた。そのクリスト自身のねらう意味を読み取ろうと多くの人が集まっていたと思われる。ただ、その〈かたち-意味のイメージ〉を読み取ろうする過程で、参加者一人一人が、ゲートという形そのものや他者とのコミュニケーションによって「自分にとっての意味」「他者(ニューヨーク市民等)にとっての意味」「公園の環境にとっての意味」等のが様々な意味を生成したと思われる。その関わることによって自分自身の存在さえ考えてしまう多様な意味が生成できることに多くの他者が魅力を感じ彼らのアートに巻き込まれたのではないかと考えた。
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2 クリスト&ジャンクロードに注目する理由
 また、彼は作品から「なぜ」を問いかけている。この「なぜ」こそ、「いかにして」ばかりにこだわっている学校が育てねばならないものである。子どもたちは、学びの「ハウ・ツー」を押しつけられ、学びの意味を他者により設定されて、個々が住む世界を読み解き、自由に意味づけする生きる主体者になりにくくなっている。
 本来人間は、環境に働きかけることにより環境をつくり、また環境により人は作られてきたのである。だからこそ、環境は日々それにかかわる者によってつくられ・守られ、意味を規定していかなければならない。こうした循環的な意味生成の重要性をクリストは、巨大プロジェクトで多くの人に体現させてくれているのである。友達と共同作業を行いながら、取りまく環境に存在する美や課題を、子どもたちに働きかけよりよく変えることできる対象として見えるようにしなくてはいけないと考える。
 見慣れた当たり前の環境に自分が働きかけることで、そこに潜むリアルな現実を見抜き、表現つなげる主体性を子ども培うことの大切さをクリストはその行動で示してくれている。そして、その主体性が環境教育や造形教育の可能性を広げてくれると考察する。
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by kazukunfamily | 2012-03-12 21:16 | アートと環境

子どもと環境とアート教育の関わりを生かした図画工作科教育の実践的研究


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